第2回 ヒューリック 学生アイデアコンペ
隈 研吾

隈 研吾 審査委員長

このコンペのユニークな点は、若い人を対象にしたコンペでありながら、しかも具体的な「場所」「敷地」が与えられていることである。
普通この種のコンペは、抽象的な敷地を対象としてアイデアを競う形になりやすい。僕はかねがね、その種の「一発芸」的な競争の仕方に疑問があったので、ヒューリックのやり方に大きな可能性を感じたのである。

そして今回渋谷である。実際には渋谷の中の特定の場所が与えられているが、またしても「渋谷的」という抽象的な課題におちいっているものが多かった。あの地面にレベル差のある「敷地」からはじめて、逆に渋谷とか東京とかいう解に到達している案が買われて、張君が最優秀となった。その他の案も力作ぞろいで、昨年よりまた、レベルがあがった。このようなリアリティのある出題が、今の若者の、自分からはものがきめにくいやさしいメンタリティに、意外にもフィットしているのではないかと思った。このコンペからどんどんたくましい若者が育ってくる予感があった。
伊香賀 俊治

伊香賀 俊治 審査委員

前回同様、現実的で構成のしっかりした提案が多かった。最優秀に選ばれた「4D SHIBUYA」は、渋谷の複雑な街区を連想させる空間を建物内部に再現し、立体的にランドスケープを展開させるという、複雑な敷地に対して正攻法に建築的な手法で解決を試みた案である。また、優秀賞に選ばれた「浮遊するウィンドウ」は、ウィンドウ(窓)に着目し、窓を単位に賃貸するという発想や、建築の内部空間までも窓を切り口に構成しようとするところがユニークな提案である。いずれの作品も、今回の不整形で高低差のある複雑な地形に対し、真正面から取り組み建築的な解決をしようとした、レベルの高い作品がそろった。次回も、現実の敷地条件や環境、BCPといった社会的な課題に真摯に取り組んだ力作が出てくることを期待する。

亀井 忠夫

亀井 忠夫 審査委員

一次審査に残った案はいずれも「渋谷な」という課題に対して、それぞれ独自の捉え方をした意欲的な提案であった。「4D SHIBUYA」はマスをダイアゴナルにカットすることにより、ダイナミックなパブリックスペースを提案。外からどのように見えるかにも踏込んで欲しかった。「浮遊するウィンドウ」はショーウィンドウを表層のものとして捉えるのではなく、内部空間と連携した立体空間としてつくりあげているところに独創性がある。「Tree life Architecture / complex of product process」は木という素材に徹底的に拘った提案であったが、コンテクストとの関係にやや疑問が残った。「ゴミを喰うビル」は社会的な問題を捉えての提案であるが、建築的にさらに魅力を感じる提案が欲しかった。

根本 祐二

根本 祐二 審査委員

渋谷は市場が巨大で変化に対する柔軟性も高い。
提案者はこの包容力のある空間でのびのびと発想しており、審査員としても大いに刺激を受けた。個人的に推した「ゴミを喰うビル」は、廃棄物処理工場をビル内に収容し、合間にオフィスや商業施設が入るという斬新なアイデアだ。余剰エネルギーの有効活用と同時に、都市住民が実は大量の廃棄物を発生させていることを痛感させる仕掛けだろう。

「FlickするRailrunner」はテナントをコンテナに収納し必要に応じて別の場所に移動させるアイデアだ。今後は人口が大幅に減少する地域も増える。固定施設では変動に対応できないが移動施設ならば対応できる。学校、病院、住宅などにも是非応用してもらいたい知恵でもある。
畠中 克弘

畠中 克弘 審査委員

この学生アイデアコンペは具体的な敷地を設定しているのが大きな特徴であり、学生たちはその敷地に即した具体的な提案が求められる。一方、今回のテーマは「『渋谷な』建築」であり、様々な捉え方が可能だった。その敷地で解決すべき問題を自ら設定し、建築としてどう解くかを競うアイデアコンペだったといえる。1次審査、2次審査を通じて、問題設定に頭をひねった数々の応募作を目の当たりにして大いに刺激を受けた。優秀作「ゴミを喰うビル」はその一つだ。このコンペも2回目を迎え、社会問題解決型のコンペとしてレベルが上がったと思う。ただ、建築としてどのように問題を解くか、建築にどんな新しい提案を盛り込むかについてはもっと頭をひねってほしいと感じた。日本の、世界の建築の未来を若者が背負っていくのだから。

西浦 三郎

西浦 三郎 審査委員

第2回の学生アイデアコンペは、弊社も今後の開発に注目している「渋谷」をテーマとしました。今回もデベロッパーという立場から、これからの渋谷にふさわしく、かつ現実性のある提案に着目しました。その点、最優秀作に選ばれた「4D SHIBUYA」そして優秀作に選ばれた「Tree life Architecture/complex of product process」は、渋谷にこういう建築が実現したら面白いのではと感じられる作品でした。学生の皆さんに、設計、建築、デベロッパーに興味を持ってもらおうと昨年このコンペを始めましたが、2回目を迎え、設計、建築そして事業性という観点からも非常にレベルの高い作品が集まるようになったと感じています。まもなく第3回のテーマを発表する予定ですので、来年も多くの学生の皆さんの参加をお待ちしています。

 
Page Top