「池袋ゲートウェイ」をテーマに開催された第7回ヒューリック学生アイデアコンペは、2019年10月14日にヒューリック本社にて公開2次審査を実施し、プレゼンテーションと質疑応答、審査委員の議論を経て、最優秀賞1作品、優秀賞3作品、佳作6作品が決定しました。(応募総数:196)
池袋の東口は、いま東京で一番おもしろい街のひとつであろう。新宿、渋谷などのターミナル駅の街と比較して、お洒落でなく文化的でもないと見られていた池袋が、突如この10年で、東京で最もクールな街になり、多様でおもしろい文化が集積する街へと大変身を遂げたのである。 その秘密を、コンペを通じて浮かびあがらせることができればおもしろいと考えて、このテーマを選んだ。その秘密がつかめれば、それは令和という新しい時代の街づくりのヒントになるかもしれないからである。 ヒントのひとつは、池袋らしい新しいエコノミーが存在することではないかと僕は感じている。その新しいエコノミーと新しい池袋らしいデザインとの「結婚」を期待したのであるが、エコノミー寄りかデザイン寄りかのどちらかで、「結婚」の新しい形態を提案してくれたものは少なかった。 コインロッカーとか自転車といったもの達にその「結婚」のヒントがあるという指摘はおもしろかった。池袋には、そのような新しい「交換」と「移動」がふさわしい気がするからである。 隈 研吾
このコンペも第7回を迎え、どの作品にも何らかの環境配慮、サスティナブルに関する提案が定着してきた事はうれしく感じている(その実現性、有効性については提案によって差があるようには思うが…)。最優秀、優秀に選ばれた4つの作品は、いずれも環境装置、事業スキーム、建築デザインについて独自の提案を行っていたが、特に最優秀のCo-in LOCKERは、そのすべてが他の作品に比べて高いレベルで融合していると感じた。また「豊島に人が根付く保育園」は、人口減、少子化といった現代日本の社会問題に正面からストレートに取り組んだ姿勢を評価した。 伊香賀 俊治
最優秀賞Co-in LOCKERは、建築に内包された稼働ユニットが街に出ていくことにより、アクティビティやサービスを提供するとともに建築空間自体も変化するところに面白さがある。優秀賞HUB Sunshine 60 AVE.は、建築における自転車と人との関係性への着目は興味深いが、自転車の内部での移動にさらなる提案が欲しかった。Bird gateは、建築において人と自然が共生できるのか?という問題を投げかけた。佳作Unconsciously Movingは、池袋のダイナミズムをストレートに表現した作品で好感が持てた。今後、審査員のイマジネーションを超える作品を期待したい。 亀井 忠夫
消滅可能性都市豊島区。今回の課題は人口減少時代の街づくりを問うたともいえる。難題に果敢に挑戦したすべての参加者に敬意を表する。池袋の吸引力を担保に、交流人口、関係人口引き上げ型の提案が多い中、保育所をキーテナントとする定住人口増加型の提案は十分なインパクトがあった。もっとも感銘を受けたのは不動産を動産化するCo-in Lockerだ。「人口が減ってもコストをシェアして成り立つ」は今後の建築界のキーワードになるべきだろう。 根本 祐二
デザインも断トツを目指せ―「建築のデザインだけでなく社会のマーケットニーズを汲んだ事業性・現実性の高さを幅広く評価」―学生コンペでは異色ともいえる「事業性・現実性」を前面に打ち出した点が、応募する学生たちに広く浸透してきたことを強く感じさせる今回の審査だった。特に、2次選考では、どの案の説明者も事業面の質問にたじろぐことなく答えていて感心した。ただ一方で、「建築のデザイン」の面では審査員をうならせる案は少なかったと思う。最優秀案や次点案は、事業面の独自性では抜きん出ていたが、「出来上がったら必ず話題になる」と太鼓判を押せる突出したデザインではなかった。ここにとどまらず、デザイン性・事業性・現実性、いずれも断トツの案を目指してほしい。 宮沢 洋
回はテーマの中に、現在ヒューリックでも取り組んでいるPPP―官民パートナーシップ事業―の要素を取り入れました。どの作品にも事業スキームと建築デザインの両立に取り組んでいる姿勢が見られましたが、最優秀に選ばれたCo-in LOCKERや優秀のHUB SUNSHINE 60 AVE.は、事業スキームと建築デザインの実現性がともに高く、バランスの良い提案だと感じました。 今回は過去最多の196点の応募がありました。来年2020年の東京オリンピック・パラリンピックイヤーには第8回を迎えますが、建築には、スポーツと同じく「世界と未来を変える力がある」と思います。より多くの学生の皆さんの参加を期待しております。 吉留 学
審査員コメント
池袋の東口は、いま東京で一番おもしろい街のひとつであろう。新宿、渋谷などのターミナル駅の街と比較して、お洒落でなく文化的でもないと見られていた池袋が、突如この10年で、東京で最もクールな街になり、多様でおもしろい文化が集積する街へと大変身を遂げたのである。
その秘密を、コンペを通じて浮かびあがらせることができればおもしろいと考えて、このテーマを選んだ。その秘密がつかめれば、それは令和という新しい時代の街づくりのヒントになるかもしれないからである。
ヒントのひとつは、池袋らしい新しいエコノミーが存在することではないかと僕は感じている。その新しいエコノミーと新しい池袋らしいデザインとの「結婚」を期待したのであるが、エコノミー寄りかデザイン寄りかのどちらかで、「結婚」の新しい形態を提案してくれたものは少なかった。
コインロッカーとか自転車といったもの達にその「結婚」のヒントがあるという指摘はおもしろかった。池袋には、そのような新しい「交換」と「移動」がふさわしい気がするからである。
隈 研吾
このコンペも第7回を迎え、どの作品にも何らかの環境配慮、サスティナブルに関する提案が定着してきた事はうれしく感じている(その実現性、有効性については提案によって差があるようには思うが…)。最優秀、優秀に選ばれた4つの作品は、いずれも環境装置、事業スキーム、建築デザインについて独自の提案を行っていたが、特に最優秀のCo-in LOCKERは、そのすべてが他の作品に比べて高いレベルで融合していると感じた。また「豊島に人が根付く保育園」は、人口減、少子化といった現代日本の社会問題に正面からストレートに取り組んだ姿勢を評価した。
伊香賀 俊治
最優秀賞Co-in LOCKERは、建築に内包された稼働ユニットが街に出ていくことにより、アクティビティやサービスを提供するとともに建築空間自体も変化するところに面白さがある。優秀賞HUB Sunshine 60 AVE.は、建築における自転車と人との関係性への着目は興味深いが、自転車の内部での移動にさらなる提案が欲しかった。Bird gateは、建築において人と自然が共生できるのか?という問題を投げかけた。佳作Unconsciously Movingは、池袋のダイナミズムをストレートに表現した作品で好感が持てた。今後、審査員のイマジネーションを超える作品を期待したい。
亀井 忠夫
消滅可能性都市豊島区。今回の課題は人口減少時代の街づくりを問うたともいえる。難題に果敢に挑戦したすべての参加者に敬意を表する。池袋の吸引力を担保に、交流人口、関係人口引き上げ型の提案が多い中、保育所をキーテナントとする定住人口増加型の提案は十分なインパクトがあった。もっとも感銘を受けたのは不動産を動産化するCo-in Lockerだ。「人口が減ってもコストをシェアして成り立つ」は今後の建築界のキーワードになるべきだろう。
根本 祐二
デザインも断トツを目指せ―「建築のデザインだけでなく社会のマーケットニーズを汲んだ事業性・現実性の高さを幅広く評価」―学生コンペでは異色ともいえる「事業性・現実性」を前面に打ち出した点が、応募する学生たちに広く浸透してきたことを強く感じさせる今回の審査だった。特に、2次選考では、どの案の説明者も事業面の質問にたじろぐことなく答えていて感心した。ただ一方で、「建築のデザイン」の面では審査員をうならせる案は少なかったと思う。最優秀案や次点案は、事業面の独自性では抜きん出ていたが、「出来上がったら必ず話題になる」と太鼓判を押せる突出したデザインではなかった。ここにとどまらず、デザイン性・事業性・現実性、いずれも断トツの案を目指してほしい。
宮沢 洋
回はテーマの中に、現在ヒューリックでも取り組んでいるPPP―官民パートナーシップ事業―の要素を取り入れました。どの作品にも事業スキームと建築デザインの両立に取り組んでいる姿勢が見られましたが、最優秀に選ばれたCo-in LOCKERや優秀のHUB SUNSHINE 60 AVE.は、事業スキームと建築デザインの実現性がともに高く、バランスの良い提案だと感じました。
今回は過去最多の196点の応募がありました。来年2020年の東京オリンピック・パラリンピックイヤーには第8回を迎えますが、建築には、スポーツと同じく「世界と未来を変える力がある」と思います。より多くの学生の皆さんの参加を期待しております。
吉留 学