社長インタビュー

Q1ヒューリックの事業について教えてください。

オフィスビルを中心に、2024年12月末時点で全国に賃貸用不動産を245棟保有しています。東京都心5区内の駅から徒歩3分以内という物件が過半で、立地の良さから当社の空室率は1%を下回る水準です。築年数の古い不動産の建替や、物件の売却・取得を通じて賃貸面積を増やし、ポートフォリオを強化してきました。核となる物件には歴史的背景もありみずほフィナンシャルグループがテナントとして入る銀行店舗ビルが多くあります。人口動態や時代のニーズに合わせて、観光ホテルや高級旅館、商業施設、データセンター、こども教育施設等への取り組みを強化している一方で、マンション開発や販売事業は行っていません。

Q22008年の上場以来、16期連続で増益増配を続けています。

当社は中長期的な利益成長を意識して経営をし、2024年も過去最高益を更新しました。人口動態や景気の状況を精緻に予測しながら経営資源の選択と集中を図り、景気の波に左右されない強固な事業基盤を築くことを心がけています。配当を通じた株主還元にも力を入れており、中期経営計画(2025年~2027年)では、配当性向の目標を40%以上としました。

Q3オフィスビルの大きさにもこだわりがあるとか。

オフィスについては中規模ビルに経営資源を集中しています。多くの国内大企業は自社で不動産を保有しており、グローバル大企業はアジア本部を法人税が安く英語が通じる香港やシンガポールに移していることから、大規模ビルへのテナント誘致は厳しい状況が続くでしょう。日本企業の99%は中小企業です。潜在テナントが豊富な中規模でかつ「東京都心5区の駅から3分以内」の立地にこだわることで差別化を図り、圧倒的に低い空室率を維持したいと思います。

Q4世界的に金利が上昇しています。不動産市場をどう見ていますか。

不動産価格については、人口動態を反映して都心の好立地物件の人気が高く、そうでないものとの格差が開いていると感じます。都心好立地での不動産取得意欲は強く、不動産の時価は高い状態が続いています。一方で郊外や地方の不動産には都心部ほど大きな変化はありません。当社は厳選立地・駅から徒歩3分以内を中心に投資・開発をしていることから、坪当たり賃料は上昇しており、空室率も1%未満で業績は安定しています。

Q52019年には日本ビューホテル(株)を買収、2024年には(株)リソー教育と(株)レーサムをM&Aしています。今後もM&Aによる成長戦略は継続するのですか?

M&Aでは規模のメリットを短時間で享受できる一方で、負の遺産を引き継ぐことにもなります。合併後にその部分を上手くコントロールして成長につなげることができるかどうかが判断の決め手になるでしょう。中期経営計画(2025年~2027年)では、当社の「次の10年後」を見据えた新たな収益の土台造りをし、連結ベースでの収益拡大を目指しています。今後も当社とのシナジーが見込まれる分野において、M&Aや資本業務提携等を積極的に活用していきます。

Q62024年はキオクシア四日市工場底地の取得や、ロジスティード(旧日立物流)の基幹物流施設の取得*などでも注目されました。

近年は、CRE(Corporate Real Estate:企業不動産)をはじめとする物件取得機会が増加傾向にあります。多くの企業さまにとって遊休不動産の活用や流動化ニーズが高まっており、当社はセールアンドリースバック(当社がお客さまの不動産を購入の上、賃貸すること)や共同開発等のさまざまな手法で企業さまのニーズにお応えしています。これは当社にとっても、コアテナントの獲得や長期安定収益確保の観点から効果的な手法です。

  • 当社出資のSPCが取得・保有。

Q72024年12月期の経常利益も、1,543億円(前期比168億円増)と過去最高を更新しました。今後の見通しについても教えてください。

当社は「経常利益」を経営の目標に据えています。これは本業の収益である「営業利益」から、借入の支払利息が除かれている一方で、有価証券や固定資産の売却等の特殊要因を含んでいない健全な経営指標だからです。2024年は前中期経営計画(最終年度2025年)で目標としていた経常利益1,500億円を1年前倒しで達成することができました。この結果を踏まえて策定した中期経営計画(2025年~2027年)では、ポートフォリオ再構築や連結ベースでの収益拡大に向けた取り組みに重点を置き、2025年1,640億円、2027年1,800億円以上を目標として掲げています。

Q8最後に、メッセージをお願いします。

建築コストの上昇や金利のある世界への回帰など、当社を取り巻く事業環境は大きく変化しています。そのような環境下、当社は中長期経営計画(2020年~2029年)を2年前倒し、2027年”経常利益1,800億円以上”の利益目標を掲げ、事業基盤の拡大と安定的な利益成長の実現を目指しています。
当社は、「変革とスピード」をキーワードに、「成長性」「安全性」「収益性」「生産性(効率性)」を高い次元でバランスさせた経営を行うという大方針の下、大きな成長を遂げてきました。
会社の成長段階や社会環境の変化に合わせ、半歩先を見据えながら「スピード感」を持って「変革」を行うこと。これをモットーに、今後も次なる成長ステージに向け、全社一丸となって邁進していく所存です。

(2025年1月30日)

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